消費者金融問題で改正貸金業規制法の成立で、複数の貸金業者からお金を借りて生活が破綻(はたん)する多重債務者の救済問題が今後の焦点になる中、岩手県内の自治体などが取り組む「スイッチローン」と呼ばれる消費者救済資金貸付金制度が注目されている。
再び多重債務者に陥らないよう市町村や弁護士などが協力し、カウンセリング(相談)に軸足を置いているのが特徴で、着実に効果を上げているという。7日に第2回目が開催された政府の多重債務者対策本部(本部長・山本有二金融相)の有識者会議でも、岩手の取り組みが紹介された。
同制度は1989年にスタート。貸し付け業務を行う県消費者信用生活協同組合を中心に相談者を紹介する県内市町村、貸し付け原資を融資する地元金融機関、貸金業者と折衝する地元弁護士会の4者がスクラムを組んで情報を共有化。債務整理や訴訟費用の肩代わりもし、多重債務問題の全面解決を図っている。
この制度によって自己破産を回避できたケースや、給与差し押さえや資産競売などの強制執行を取り下げることができたケースもある。寄せられる相談(5020件、2005年6月~06年5月)に占める解決件数の割合(64・8%)を押し上げているという。
消費者金融利用者は全国信用情報センター連合会によると、約1400万人。このうち5件以上借りている利用者は約230万人に上っているが、弁護士会の法律相談センターや地方自治体の消費生活センターなど現行のカウンセリング態勢では30万人程度にしか対応しきれないのが実態となっている。
有識者会議は今月下旬の会議で、岩手の先行事例などをたたき台にしてカウンセリング体制の具体案を示す見通しだ。その後、貸し出し上限金利の引き下げによる審査基準の強化により、利用者を悪質な無登録業者(ヤミ金融)に向かわせないためのセーフティーネット(安全網)作りに着手。来月には5兆3000億円~8兆円が必要ともされる新たな融資制度の議論に入る見込みだ。
フジサンケイ ビジネスアイ - 2007年2月8日